2014年12月アーカイブ

第10回 出猟の朝

 午前4時半、時計のベルで起きるとストーブをつけて湯を沸かし、歯を磨いて白湯を飲む。前夜のうちに空気銃の準備は済んでいる。準備と言っても空気の圧縮と弾の確認くらいだが、圧縮は自転車の空気入れみたいたものを何度も押して行うので、朝やると寝ている家族を起こしてしまうのだ。空気銃の弾は鉛でできていて、ときどき混じっている形の悪いものを弾いておかないと精度が狂うことがある。狩猟免許はポケットに入って...

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第9回 山の上の宴会

 初めて獲ったバンをもっとも美味しく食べる方法を考えていて、鹿太鼓作りでお会いした半對屋雀斎〔はんずいやじゃくさい〕さんに教えを乞うべきだと結論した。宮澤さんは店があるので忙しい。その点、雀斎さんは料理の腕も確かだし、マイペースの生活をしているようだ。連絡するとぜひいらっしゃいと言ってもらえたので、一家で訪問することにした。

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第8回 ついに獲物が獲れた!(後)

 銃を手に池の淵まで近づき、茂みに腰を下ろす。向こう岸までは50メートルほど。ぼくの存在には気づいていない様子で、動く気配がない。スコープを覗〔のぞ〕くと、バンの特徴である、黒っぽい羽根と赤い嘴〔くちばし〕が見える。

 中腰になってできるだけ態勢を低くし、狙いやすい位置を探すが、照準がなかなか合わず、いったん銃を下した。標的を定める技術が低いため、スコープを覗き始めたときから息...

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第7回 ついに獲物が獲れた!(前)

 狩猟解禁日、午前4時半起きで待ち合わせの"道の駅"に向かう。宮澤さんの知人であるコーイチさんも加わり、3人で"撃ち初め"だ。

「さて、どこからまわろうかな」

 林道へとハンドルを切りながら宮澤さんが言った。順当なら鴨の集まりやすい大きな池からだが、解禁日は猟友会メンバーたちが集まって鴨撃ちをやるのだそうだ。北信地域はもともと鳥猟の本場。近年、鹿やイノシシが増...

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