NIEとはNewspaper In Education(教育に新聞を)の略。新聞を教材として教育に活用しようという運動です。

第13回NIE全国大会 高知で開催

 第13回NIE全国大会が7月31日と8月1日、高知市で開かれた。長野県からの29人をはじめ、全国の教員や新聞関係者など約800人が参加した。日本新聞教育文化財団と高知県教育委員会が主催、高知県NIE推進協議会と高知新聞社が主管。「こどもが拓(ひら)くNIE 地域に根ざす学び求めて」をテーマに、パネルディスカッションや公開授業、実践発表などを行った。 

◆◇1日目◇◆

 初日のパネルディスカッションは、「新聞を活用して育てる社会力〜新しい教育課程を踏まえて」がテーマ。高知市横内小学校の友村憲朗校長は「新聞記事から得た情報が子どもの意欲につながり、実際に行動を起こさせ、振り返って評価している。子どもたちの学びが成長している」と述べた。同市江ノ口小学校の川口加代子教諭は「新聞に『親しむ』『学ぶ』『発信する』の3つの視点で実践している。継続は力なりというが、語彙(ごい)力が増え、読む力がついた。『発信』の中で、自分たちがアンケートをしたり、選挙について書いたりして、社会的関心が広がっている」とした。広島県廿日市市大野中学校の迫有香教諭は「社会科で新聞を活用することで、歴史認識と現代社会の認識の融合を図るなどの取り組みをした。これからは新聞をスクラップするだけでなく、なぜそう考えたのかを書かせたい」と発言した。
 新学習指導要領に関連して、川口教諭は「NIEを続ける中で、子どもたちの学習や生活の態度を良くなった。新聞を作ることで家庭との連携も深まった。新聞を楽しもうという気持ちを大切にし、指導要領を味方にして取り組みたい」。友村校長は「子どもたちに、より良く社会を変えていく力を付けることが求められている。それには、問題を見抜き、事実をしっかりと認識する力、自分の考えを自分の言葉で言えることが大切。新聞は、子どもを社会とつなげる有効なツールだ」とした。
 文部科学省初等中等教育局の大倉泰裕教科調査官は「新要領の柱は、言語活動の充実だ。その有効な教材として新聞がある。新聞を読ませるだけでなく、どういう力を生徒に付けたいのか。インターネットにない新聞の魅力をどう生かすか。どうアレンジするかが求められている」と話した。
 初日はこのほか、高知市出身の作家、山本一力さんが「生きる力を新聞で」と題して講演。「新聞と学校が両輪となって、新聞の楽しさを子どもたちに伝えてほしい」と訴えた。

パネルディスカッション

新学習指導要領を踏まえて開いたパネルディスカッション
地元高校生が新聞配布
高知県の高校の新聞部・写真部の生徒が、自分たちで制作した大会の新聞を配布した

◆◇2日目◇◆

 2日目は、公開授業や実践発表、ワークショップなどを行った。
 小学校の公開授業は高知市江ノ口小学校の6年生が行った。班ごとに、新聞の中から「夢」を感じる記事を探し、ニュース番組形式でその内容を発表するという内容だった。土佐塾中学校(高知市)は、心引かれた新聞記事の見出しや要約、感想を「新聞ノート」に書くという活動を続けている。3年生の公開授業では、「新聞ノート」をもとに食糧問題について発表し、クラス全体で討論した。歴史新聞づくりの授業を公開したのは、高知県高知南高校の2年生。高知新聞に掲載された「お龍写真 同一人物か」の記事を使って行った。見出しの付け方やレイアウトの仕方を考えた。
 特別分科会として、東大大学院の水越伸・准教授が「新しいメディア・リテラシーのとらえ方」があった。「その時―編集局幹部の判断は?」と題した分科会では、新聞社の編集幹部が、NIEに取り組む教員らと交流した。また、NIEの初心者を対象に、新聞を使った教材づくりを体験するワークショップを開いた。
 明治時代の自由民権運動での新聞の役割などを考える実験授業「新聞の葬式」や、「子どもの目・記者の目」をテーマにした実践発表もあった。

分科会(小学校)

小学校の公開授業。記事の内容をニュース番組形式で発表した
分科会(中学校)
土佐塾中学校の「新聞ノート」を見る参加者


(2008.12 ながのNIEだより第17号に掲載)
※肩書き・年齢などは掲載当時のものです。