第18回 痛恨の三連敗

原因はスコープにあり!?

 つい最近まで4時台に薄暗くなったのに、今日の日没時間は5時10分。現在3時半だから、もう一戦やれそうだ。気を取り直し、明科に向かう。当たったものの、水中に潜ったコガモを発見できず涙を呑んだ撃ち下ろしのポイントである。

 道路から藪に入ったところでコガモ発見。なんと、岩の上で西日を浴びながら休憩中だ。たぶん寝てるね。自信喪失気味のぼくだが、ここらで何とかしたい。本日最後の1発と決め、雪の上に座り込んで入念にイメージトレーニングした。なぜカルガモを狙った弾が大きく逸れたかはわからないが、もしかすると弾が小枝に当たったのかもしれなかった。スコープはピンポイントで標的をとらえるため、手前にある小さな障害物を見逃すことがあるのだ。

 岩の上まで、小枝に邪魔されず撃てる場所を見つけて位置取りした。集中力が高まり、風の音がよく聞こえる。銃をセットして良く狙い、発射。

 まただ。また外した。しかも、手ごたえってもんが皆無の外し方。岩を弾が叩いた感触はまったくないから、上に逸れたのだ。コガモの反応を見ると、カルガモと似たようなもの。変な音がしたから一応逃げるかって感じである。

 まいった。ひとり猟でビッグチャンスが三度も訪れることなどめったにないのに、どうしても当たらない。ぼくには射撃のセンスがないとしか思えない。

「お帰り。今日は獲れ...なかったか。鍋は遠し。でも、この時間までやってたってことは楽しめたってことだからいいじゃない」

 家に戻ったぼくの表情を見るなり、ツマに慰められた。が、娘は容赦ない。

「鴨鍋食べたいのに。お父さん、最近ちっとも獲れないねー」

 その通りであります。獲物を獲れない猟師は何言われても反論できない。

◇   ◇

「スコープが合ってないんじゃないかな」

 首を傾げて顛末を聴いていた宮澤さんが思わぬことを口にした。初心者の域は出ないものの、ぼくの射撃は去年より構えが良くなっている。じっくり狙い、当たるだろうと思って撃った弾が続けざまに大きく逸れるのはヘンだというのだ。

「そうそうズレるものじゃないけど、たまにあるんですよ」

 銃を持つとき、ついスコープをつかんでしまうことがある。藪の中を進んでいるときや尻餅をついたとき、木の幹や地面に当たることもある。とにかく何かの理由でスコープがズレてしまえば、ど真ん中を狙っても当たりっこないのだ。

「冬場は射撃場が休みだし、どうしたらいいかな」

 勝手に山などで撃ちまくって調整するのは違反だ。銃は獲物を狙って発砲しなければならない決まりである。ならば、規則に従い、実戦の中で微調整していくしかない。

 スコープを握り、左右に動かしてみても、ぐらぐらとはしない。が、接合部を締めてみたら少し緩んでいるようだった。銃口の接合部にも緩みが感じられたので、むしろそれが原因なのかもしれない。いずれにせよ、猟期前の調整が甘かったということだ。スコープがズレることなど念頭になかったなあ。

 次の週は変わった猟になった。当たる可能性が少ない中、どう外れたかを確かめる作業だ。手がかりは水しぶきの位置。ぼくの銃は、スコープの中心を狙うと、標的の右上に飛んでいるようだった。なるほど、これじゃ当たりっこない。

 ある程度の調整をして、あとは実戦で細かい修正を施す。今シーズンはこれで乗り切っていこう。

今回のイラスト