第22回 鳥撃ち部結成!?

 3月半ば、宮澤さんから今シーズンの打ち上げをしようと声が掛かった。コーイチさんを始め何人か猟師がくるという。考えてみたら、猟をする以外は『八珍』で食事をするくらいで、猟師の集まりを催したことがない。ほかの人がどれくらい獲ったかも知りたい。

 会場は長野市の篠ノ井にある海鮮居酒屋『四季彩』。参加者は狩猟歴40年の宮澤さん、10年選手のコーイチさん、今シーズンデビューしたアベちゃんと『四季彩』のご主人・中沢竜也さん、資格を取得し来季デビューに備える公務員のカズヤさんにぼくを加えた6名。駆け出し組が多いのと、鳥撃ち好きであることが特徴だ。

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 まずは今シーズンの成果から発表しよう。ぼくの当たらない話ばかり聞かされている読者は、鳥撃ちって難しいんだなと思っているだろうが、けっしてそんなことはない。獲る人はちゃんと獲っている。

 宮澤さんはキジ、ヤマドリ、鴨を合わせて20羽くらいで、例年より少なかった。普通は30~40羽、過去最高は70羽なのだ。店の定休日が減ったり、ぼくやアベちゃんの指導に時間を取られたせいだけではないという。

「年明け、かつてないほど鴨が少なかったのが響いたね。それと、冬場に犀川を訪れる釣り人が増えたのも原因かな。川は誰のものでもないので、しょうがないことだけど、来シーズンは対策を練らないとね」

 年末以降、家庭の事情で猟に出られなかったコーイチさんは、キジ3羽。数は少ないが、シーズン開始から連日のようにキジを求めて走り回り、1羽はぼくが同乗したときに仕留めた。当然、来季は巻き返しを狙う。

 中沢さんは狩猟免許を取ってはいたものの店が忙しく、数シーズン"ペーパードライバー"状態。今季が実質的なデビュー年にも関わらず、散弾銃を手に千曲川でキジ、ヤマドリ、鴨をしっかり撃ち取った。大物猟にも何度か参加し、鹿を獲ったというから新人としては上出来だろう。

「どっちもおもしろいですね。大物猟はチームプレーなので、ひとりでも行けるのが鳥撃ちの魅力。来シーズンは一緒に行きましょう」

 いいねえ。千曲川ではまだ猟をしたことがないのだ。

 紅一点のアベちゃんは1987年生まれの20代猟師。ぼくと同じFXサイクロンを使用する空気銃ハンターである。しかも、ぼくとは違い初年度から猟果も上げた。ヒヨドリ、ムクドリ、キジバト各1羽、カルガモ2羽は立派な成績。

「ヒヨドリは川の向こうの木の枝にいて、距離70メートルくらい。頭を狙ったら首でしたが、うまく当たってストンと下に落ちました」

 一同これには拍手喝采。猟師同士だから値打ちのわかる自慢話はどんどんすべし、というのが宮澤さんの考えなのだ。気を良くしたアベちゃんが、日本酒を飲みつつどのようにカルガモを獲ったかを話す。誰かが鴨の話題を引き継ぎ、料理の方法になり、鹿や害獣駆除へ転がったかと思うと、また鳥撃ちへ戻る。

 最初のうちこそ緊張気味だったアベちゃんが、"大物猟ではなく鳥撃ちをしたかった理由"を語り始めた。彼女は幼いころから鳥が好きで、3歳のときには飛ぶ鳥を見て"おいしそうだな"と思っていたそうだ。好きだから保護したいではなく、好きだから見に行くし、飼うし、食べたくなった。アベちゃんの中では、鳥への愛情と獲って食べる行為が無理なく共存するのだ。

「バードウォッチングが趣味で、文鳥も飼っているんです。狩猟免許を取ったのは、食べ物への興味から。鳥好きがなぜと言われますが、私は獲ったら一切無駄にせず食べ切りますよ」

 なかなかわかってもらえないと笑うけれど、話せば鳥好きであることはすぐわかる。味の研究にも余念がなく、獲ったものはもちろん、宮澤さんに頼んでハシボソガラスを撃ってもらい、食べてみたりもしている。

「カラスおいしいです。脂っ気の少ない赤身で、やや筋張っているけど歯ごたえがいいんです。来年はぜひ狙ってください」

 カラスか。いっちょ狙ってみるか。その前に鴨だけど...。