第25回 鳥獣被害対策の前線で(前)

 松本へ来てから知り合った環境調査会社の知人が、独立して新しい会社(株式会社BO-GA。本社は福井県敦賀市)を立ち上げたので、いまがチャンスと松本事務所へ会いに行った。前々から、いったいどんな調査をしているのか興味があったのだが、週末でさえ調査やイベントで飛び回っている多忙ぶりに遠慮していたのだ。

 道に迷いつつ事務所を訪れると、床にダンボール箱が積んであったりして、スタートしたばかりの会社らしいと思わせる。

「あ、どうも」

 奥から百瀬剛さん、市川哲生さんが出てきた。のぞき込むと女性スタッフが4名いて、てきぱきと仕事中。みんな、元同僚たちだそうだ。前の会社は多様な仕事をしているため、環境調査に絞り込んだ仕事をしたい百瀬さんたちが部署ごと新会社を作った形。円満な独立なので、のびのび仕事ができる。ということで、BO-GAはできたばかりの会社でありながら仕事に打ち込む体制が整い、全員が張り切っているのだった。

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 専門分野は、建設工事などに伴う水質調査や動植物保護対策。わかりにくいか。百瀬さんは大学時代、カラマツの研究に没頭していたので植物に強い。市川さんはカワネズミの研究のため夜中じゅう森で過ごしていた人で動物に強い。ますますわからないね。

「いま、アカマツの被害が深刻なのはご存知ですよね。マツクイムシにやられて立ち枯れてしまう被害です。これはもう切るしかない。では切った後どうするか。豊かな広葉樹林へと再生させたいと。そこで、クライアントと一緒に計画を立て、環境調査によって活動を支援し、コンサルティングも行いながら事態を改善させていくのが我々の役割だと思っています」(百瀬さん)

 アカマツの被害状況を調べて終わりにするのではなく、プロジェクト全体に関わることで、知識や経験を活かす。そこまでやりたいから会社を作ったと言ってもいい。日本三大松原の一つであり、国の名勝にも指定されている、福井県にある気比の松原では、松原のマツを回復させる検討プロジェクトに関わった。

 マツそのものの寿命なのか。土がダメになったのか。調べると答えが出た。植え過ぎだったのである。で、健全な状態に戻すにはどうしたらいいかを考え、"気比の松原100年構想"を提案した。市民と協働して松原の再生に取り組む計画。このように全体に関わることで、やりがいや責任も強くなるし、なにより仕事が面白くなる。

 BO-GAへの依頼主は民間企業もあるが、行政がメインだ。市町村から環境省、国土交通省まで、ひっきりなしに環境調査が行われてている。ということは、請け負う業者も全国各地に存在することになる。ただ、どちらかというと裏方なので目立たず、何をしているかが知られにくい。BO-GAは小さな会社なので、大規模プロジェクトではなく、より専門的だったり、地域に寄り添った内容の仕事をしていきたいそうだ。