第17回 犀川の鳥たち

都会の鳥には警戒心がない!?

 川魚を食べて暮らしているカワウやアイサ、サギは、食べてもおいしくないから猟師は興味を示さないが、魚にしてみればやっかいなハンター。動きを観察していると面白い。勢いよく嘴を突っ込んでも空振りに終わることも多く、それでもめげず、獲れるまで延々繰り返す。生きるって大変なんだ。

 カイツブリは、潜水して小魚や昆虫を捕食して暮らす小型の鳥。川に何かいるけど小さい。ポツンと1羽か2羽で動いている。カイツブリだったら獲れない(非狩猟鳥)からイヤだな~と双眼鏡を覗〔のぞ〕くと、やっぱりそうだったということが多い。

 でも、水面近くを走るように飛ぶ姿が動きはかわいいし、潜ったと思ったら意外な場所から浮かび上がるところを見ると、水中でめまぐるしく魚を追いかける図が想像できて応援したくなる。

 雪に埋もれながら河原に入り、空を見上げると、カラスが飛行し、トビが舞っている。そばでは小鳥たちが何かさえずりながら、枝から枝へせわしなく移動して食べ物を探す。冬の犀川は本当に退屈知らずだ。

◇   ◇

 月の半分は東京にいるので、ときどき近くの善福寺公園まで鳥を見に行く。池にいるのはマガモ、カルガモ、オナガガモ、コガモなど。渡りをしない留鳥もいるだろうが、越冬のため海を越えてきた鴨もいるだろう。

 運のいい鳥だなあ。ここには猟師がいないどころか、禁止されているにもかかわらず餌を与える人までいる。危険がないと知っているのか、ここの池にいる鳥は人間を恐れず、水辺に立っていると近づいてきたりする。

 キミたちはラッキーだなあ。犀川でこんなことしたら命がないんだぞ。知らないと思うが、ぼくは猟師で、空気銃を操るのだ。実績はまだないけど、犀川にいる警戒心の強い鳥たちを相手にしている。ここに銃があってみろ。一発で急所に。いや、距離が近すぎて当たらないか。あそこの木まで下がれば。

 でも思う。そんな猟はつまらないと。警戒する相手、思い通りにならない獲物を追いかけるからこそ猟は楽しいのだと。

 寒さにかじかむ手。なかなか狙いが定まらないスコープ。気配を悟られないよう、音を立てないよう、全身の神経を集中させる緊張感。シビレるような猟の感覚が蘇〔よみがえ〕り、善福寺池のほとりで、ぼくはカラダを熱くさせるのだ。

 ああ、早く松本に帰って、犀川に繰り出したい! 今回のイラスト