第1回 初シーズンを振り返る

セカンドシーズンの目標を宣言

 もうひとつ気がついたのは、人は慣れるということだった。たとえば前述した資格取得までのドタバタだ。いまとなっては数行でまとめられるが、そのときはドキドキの連続で、試験前夜は傘を銃に見立て、娘に試験管の役を頼んで特訓に励んだものだ。部屋で傘を構える父と、構えが正しくないとダメ出しする小学生の娘。親子で何やってんだかなあ...。

 また、初めて鳥を撃ったときの、銃を構えてから数秒間の心の動きも、2発目からはもう訪れない不思議な体験だった。初年度のぼくが経験した、ビギナーが引っかかりそうな失敗や悩みは、猟師に関心を抱く人の参考になるかもしれないと考え『猟師になりたい!』という本にまとめたが、2年目はどうなるだろう。少しはましな猟師になれるだろうか。

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 去年は資格を取り、出猟することが目標だった。つまり、猟師デビューそのものが目標になりえた。セカンドシーズンはそうはいかない。自分なりの目標を定めておかないと、緊張感のない中途半端なシーズンになりかねない。こうして連載まで始めるのだ。ここは読者に対してはっきりと書いておく義務があるだろう。

 [猟師北尾、2シーズン目の誓い]
・出猟回数を2ケタに増やし、経験値を上げる。
・必ず1羽獲る。目標は5羽とする。
・鳥の解体から調理まで、命をいただく過程を自力で行えるようになる。
・大物猟に参加する。
・山の被害を頭数や被害額などの数値で語るだけではなく、どのような取り組みがなされているのかを具体的に追う。

 これくらいが妥当なところだと思うが、念のため、娘の意見を聞いてみるか。

「お父さんに5羽も獲れるかなあ。ま、期待しないで待ってるよ」

 冷めたコメントだなあ。獲るよ、必ず。いや、なるべく...。

「できればカルガモじゃなくてマガモにしてね。鍋がおいしいから」

 どうやら家族からの注文がいちばん厳しいようだ。

今回のイラスト