第4回 狩猟サミットに参加した

なぜ猟師を選ぶのか

 気持ちの方向性が定まったらオッサンとて動く。動きまくる。大学生の、環境に対するまっすぐな危機感に偉いなぁと感心し、海外放浪を重ねてきた若者の話に耳を傾け、農業と狩猟で生活の糧を得ようともくろむ青年の理想論をまぶしく捕え、わな猟を始めたいと目を輝かせる女の子に根拠なく「大丈夫だ、やれやれ~」と声をかけたりするのだ。

 オッサン同士の会話も熱い。これから先の人生を充実させるべく猟師になりたい。もういい歳なんだから多少なりとも人の役に立てないものか。血沸き肉躍るハンティングの世界に足を踏み入れたい。話が止まらないのは、身近なところに狩猟の話ができる相手がいないせいもある。

「狩猟免許取得中なんですが、情報もないし、地元に猟師の知り合いもいないので参加してみたんです。良かったですよ。ここにいたら、猟師不足が問題になっているなんて思えなくなってきました」

 オッサンのひとりが言い、一同深く頷〔うなず〕く。

「こういうことがきっかけとなって狩猟への関心が高まり、若いハンターが増えるといいですよね。まぁしかし、まずは試験に合格しないと。ところで銃のことなんですが、どのメーカーがいいとかありますか?」

 宴会が終わって部屋に戻っても話が尽きない。そのくせ消灯時間になるとやたら寝つきが良くて、たちまちイビキの合唱になるのもオッサンならではだ。

 こんな具合で終始笑顔の絶えないイベントだったのだが、気になったことがある。みんな妙にマジメなのだ。問題意識が高いからそうなるのかもしれないが、単純に猟をしてみたい、おもしろそうだからやってみたいという人に、不思議と出会わなかった。

 もうひとつ、狩猟で生計を立てることを真剣に考えている人がけっこういたのも新鮮だった。分科会では一足先にそれを実践中の講師が話をしたが、立ち見まで出る人気ぶりだ。なるほどなあ。移住して就農する人も大勢いるのだから、狩猟で生計を立てたいと考える人がいたっておかしくないのだ。狩猟をし、作物を作り、自分なりのスタイルで暮らしていくのもいいと思う。

 ただ、いまのところ道は険しい。実践者の話を聞いても、収入のメインは害獣駆除の報奨金だったりする。つまり税金だ。ぼくは猟師の収入は、獲物をとって肉を売ったり、皮や骨で楽器や装飾品を作って売るのが健全じゃないかと思う。報奨金がその一部であってもいいけど、報奨金ありきで猟師生活を営もうとするのはどうなんだろうと疑問が残った。

◇    ◇

 分科会で講演した千松信也さん(『ぼくは猟師になった』の著者)のことばが心に残っている。

「僕はわな猟で年間に鹿10頭、イノシシ5頭しか獲りません。自分と家族、友人で食べるにはそれで十分。害獣駆除は大切なことですが、動物がお金に見えてしまうような猟師にだけはなりたくないのです」

今回のイラスト