第6回 「昇格」目指して大猟祈願

 狩猟解禁日までにやっておくべきことに、射撃練習がある。秋になるとシーズンに備えて猟師たちが練習に励むので、射撃場はどこも混雑している。ぼくも先輩猟師の原尻正敏さんにフォームチェックしてもらうべく、菅平射撃場に出かけた。春以来、約半年ぶりの実射。部屋で構えの練習をしていた程度だからカンは鈍りまくり、銃が重く感じられて仕方がない。

「下から見上げる形になってますね。まっすぐスコープを覗〔のぞ〕かないと的が見えないでしょ」

 その指摘は正しい。理屈はわかっても実行できないのが悔しい。

 手こずっていたら、居合わせたライフル銃の名手が基本姿勢を指導してくれた。初心者のうちは、銃尾を肩にしっかり当て、頬を銃床の決まった位置に乗せることができない。その欠点を補うため、頬を乗せる位置に印をつけるのがいいと言う。引き金をスムーズに引くコツも的確に教えてくれた。すぐにはうまくできず、構えてから撃つまで時間がかかってしまうが、そこは実戦で補っていくしかないだろう。当面は三脚を使ってブレを防ぐつもりだ。

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 翌日は、松本の深志神社へ狩猟の安全を祈願に行った。サッカーでJ1昇格を決めた地元チーム・松本山雅が、ここで必勝祈願していると聞いたのだ。

 狩猟免許こそ持っているが、ぼくはまだ1羽の鳥も獲ってない自称猟師。松本山雅にあやかって「昇格」を決めたい。賽銭〔さいせん〕をフンパツし、ゆっくりと手を合わせた。

 どうか一日も早く獲物の急所に命中しますように...。

 いや、そんなことじゃダメだ。何より願うのは安全。狩猟期間終了まで、無事故で過ごせますように。これである。慎重すぎるほど慎重だった初年度は出猟数・発砲数が少なく、事故の起きようもなかった。少し慣れてきた2年目は油断が生じやすいし、獲りたい一心で無理をしてしまいそうだ。

 ただでさえ調子に乗りやすい性格だけに、気をつけたいのは基本中の基本を忘れないこと。日の出・日の入り時間の厳守、銃口に弾を残さないよう撃ち切って終える、銃を置いたままクルマを離れない。順法精神に則〔のっと〕って猟に励むことでおのずと運が向き、我が家の食卓に鴨鍋が登場する...、結局はそこかよ!