第6回 「昇格」目指して大猟祈願

動くヤマドリを初めて目撃!

 準備の仕上げは猟場の下見。宮澤さんと連絡を取り、午前6時に待ち合わせた。自宅から1時間弱かかるので起床は4時半。眠い目をこすりながらコーヒーを飲み、厚手のパンツを身に着ける。そうそう、この感じだ。いまはさほどの寒さじゃないが、防寒下着を着込み、かじかむ手をこすり合わせながら家を出ていくんだよなあ。

 駐車場にクルマを置き、宮澤さんの軽トラックで急いで川へ。本日の日の出時刻は6時26分なので、その時間に鳥がいるかどうか様子を見ておきたいのだ。

「あれ、いないなあ。例年、いるところなんですけど」

 最初の猟場は空振り。やはり今年は犀川への渡り鳥の飛来が遅いようだ。2カ所目も鳥の姿はない。ただ、いい猟場であることには変わりがないので、鴨が入るのは時間の問題。引き続きウォッチが必要だが、狩猟解禁日までに入る保証はない。

「大丈夫。猟場はたくさんありますから。数は少なくてもまったくきてないわけではないでしょう。山に入って巡回してみましょう」

 宮澤さんが熟知する溜め池めぐりが始まった。山間の農地では日照りに備え、水を確保するための池が点在するのだ。多くは舗装道路から奥に入った目立たない場所にあるので、地理に明るくないと発見すら難しい。

「あ、いた!」

 100メートル四方ほどの池を、気持ちよさそうに鴨の群れが泳いでいた。双眼鏡で覗〔のぞ〕くとマガモだ。いるところにはいるのである。

「あの鴨を空気銃で狙うとすればどこから撃ちますか?」

 宮澤さんから問題が出される。回収を考えると、岸に寄ったところを横の土手から撃ってタモ網でキャッチしたいが届くかなあ。

「池だから流れないけど、運が悪いと届かない。鴨キャッチャーを使うのが正解。そう高くないし、ひとつ買っておくといいですよ」

 針のついた球を釣竿の先に装着して鴨を引っかける道具があるそうだ。溜め池での猟は川よりやりやすく、民家からも離れているので安全性も確保しやすいだろう。では、なぜ先シーズンは川ばかり行ったのか。寒くなると池に氷が張り、鳥が移動してしまうのだ。溜め池は12月半ばまでが勝負なのである。

◇   ◇

 10カ所以上回り、最後に宮澤さんがヤマドリを発見した場所を見に行った。

「ヤマドリはあまり住む場所を変えないので、いるのは間違いない。姿が見えるかどうかはその日によるけど...」

 話が急に止まったのは50m先の道端にヤマドリがいたからだ。オス1羽、メス2羽。ぼくは動くヤマドリに初めて遭遇した。長く伸びたオスの尾羽が美しくて見惚れてしまう。ヤマドリたちは1分ほどじっとしていただろうか。やがてメスが飛び、最後にオスが悠々と去って行った。

 また会おう。15日の朝、ぼくたちは再びここにくる!

今回のイラスト