第7回 ついに獲物が獲れた!(前)
2014年12月
5日
ドンッ、ドンッと銃声2発。しかし、キジは弾をかわすかのように木々の間をすり抜けて森に去ってしまった。散弾銃は発射後に弾が散開するため、20~30メートルの距離なら適度に弾がばらつき、高確率で的中する。それより距離が遠くなると隙間だらけになるし、木々の間を狙うとなると標的まで達しない弾も増えるので、ガクッと的中率が落ちてしまう。
「コーイチがヘタなのはわかってるから、飛んだところを撃とうと思ったんだけど、距離が悪かったな」
「やめてくださいよそのオトリ作戦。ボクだって、宮澤さん見えなかった分、撃つタイミングが一瞬遅れちゃったんですよ」
悔しがってはいるけど、ふたりの表情は明るい。キジは逃げたがそれほど遠くへは行かない。根気よく通えばまた出会えるだろう。それより、初日の朝イチから鴨やキジに遭遇できたことを喜んでいるふうだ。
獲物はいる。その手ごたえは、つぎの溜池でも証明された。直径30メートルほどの小さな池に、マガモが4羽。ここは奥が林で手前が開けているので、農地側に飛び立ちやすい。鳥が入ってさえいれば絶好の猟場だと、下見時に話していたところである。
空気銃を担ぎ、畑側の土手を這い上がる。鳥に発見されにくいという点で猟師に有利だ。呼吸を整えてからそっと覗くとオスが1羽いた。青首と呼ばれる鴨の最高峰だ。口パクで「ア・オ・ク・ビ」と伝えると、宮澤さんが手を振ってこたえた。ぼくにとっては気楽な射撃だ。外したとしても背後にふたりが控えている。難点は距離が近いこと。スコープを50メートルで合わせているので、気持ち程度下にずらしたほうがいいのだが、その加減がよくわかってないのだ。ぐずぐず迷っていると腕が疲れ、銃身が震えてしまう。
ならば、ふたりを信頼することだ。銃を構え、スコープの中心が青首を捉えたと感じた瞬間に引き金を引く。
バシュッ。う、外した。水しぶきに慌てた鳥たちが一斉に飛び立ち、畑のほうにやってきた。ドンッ、ドーン。宮澤さんの2発目が青首に命中し、どさりと畑に落ちる。やった、猟期最初の獲物が青首とは冴えてるぞ。ぼくもコーイチさんも、自分が外したことを忘れて小躍りだ。
すぐさま次へ移動。今度も小さな池だが鳥の姿は見えない。「ここはいませんね」と呟くと、宮澤さんが「いや、いますよ」と小声で言う。
「向こう岸にバンがいます。距離もいいし、空気銃で撃ってみましょう」