第8回 ついに獲物が獲れた!(後)

 バンの2発目は、ぼくにしては震えがない状態で撃てた。1発目を上に外していたため、念入りに首を狙い、それたときでも頭に当たればと考えた。撃った後にスコープでバンの姿を見たということは、引き金をまっすぐに引くことができたということだろう。弾は首に的中していた。狙い通りに当たったということだ。

 これの意味するところは、スコープが合っているということである。いくら万全の状態で撃ったとしても、照準合わせが狂っていれば、中心で捉えたところに当たる保証はない。獲物までの距離50メートルは、射撃場で合わせたときと同じだ。つまり、当たるべくして当たったことになる。

 ということは、今後もいい場所から正しい姿勢で撃てば仕留められる理屈ではないか。狙った場所に当たった経験がないぼくは、これまでスコープを信じ切れておらず、少しでも大きな的をと、鳥のボディを狙いがちだった。しかも、きっと当たらないだろうと思いながら撃っていた。

 でも、これからは違う。自信を持って急所を撃てる。それこそが本日一番の収穫かもしれない。とにかく貴重な一歩だ。バンよ、逃げずにいてくれてありがとう。しっかり食べてやるからな。

◇   ◇

「おめでとう。お祝いに青首あげるよ」

 宮澤さんが言ってくれたが、今日だけは遠慮したい。青首と一緒じゃ、バンがかすんでしまう。

「うん、それもそうだね。ボクもバンは食べたことがないので、どういう味だったか教えてください」

 だが、思い通りにはいかなかった。開店準備のために店に行く宮澤さんと別れて15分後、電話がかかってきたのだ。猟師仲間の小島敏文さんが、ぼくを待っているという。

「ヤマドリをプレゼントするから早く来いと言ってます」

 昨シーズンから、ヤマドリ、ヤマドリと騒いでいるのを覚えていてくれたらしい。しかも開店前から待っていてくれたとは。バン獲ったからいりませんとは言えず、『八珍』に急行した。

「おう、おう。ヤマドリ獲ってきたぞ。2羽あるから好きなほうを持ってけ」

 ありがとうございます。ぼくも初日が出ました。バンを獲りましたよ。

「バン? 見せてみな。なんだよ、ちっちぇえな。こんなのオレ、撃ったことも食べたこともない。北尾さんに撃たれるなんて、おまえもよっぽどツイてないなぁ。池で居眠りしてたんじゃないか、ははは」

 ...当たってるだけに何も言い返せなかった。

今回のイラスト