第11回 ヤマドリとキジを探して

 信州での代表的な鳥撃ちは、ぼくがやっている鴨、そしてヤマドリとキジだろう。鴨以外、空気銃のぼくには手の出ない相手なのだが、宮澤さんに同行し、ちょくちょく山に入っている。撃たなくても楽しく、たとえ発見できなくてもガッカリしない。それがヤマドリ猟、キジ猟なのだ。

 これらの猟は、猟犬を使って行うのが正統派。鴨などの水辺にいる鳥なら泳ぎのうまいレトリーバーが回収犬として活躍する。レトリーバーは知能が高く、撃ち落とされた獲物がどこに落ちたか、しっかり記憶できるという。

 山にいる狩猟鳥を得意とするのはセッターやポインター、スパニエルなど。鳥撃ちでの犬の役割は獲物を捕らえることではなく、居場所を突き止め、猟師が撃ちやすい場所に追い出すことになる。ちなみにセッターは追い出す(セットする)が上手く、ポインターは獲物の居場所を指し示す(ポイントする)ところから名前が付けられたそうだ。

 ぼくもいつか、鳥打帽をかぶり、犬と一緒に猟をしてみたい。我が家には猫がいて、マンション暮らしも猟犬を飼うのに適さないので、その日をイメージしては楽しんでいる。

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 宮澤さんは以前、犬を連れて猟をしていたが、いまは単独。水辺では回収用に船を駆使している。池を攻めるとき軽トラに積んでいくカヌー以外に、地元のおもな猟場にボートをキープしているのだ。

 回収が難しそうな場所で鴨を撃とうとするので「当たったらどうするんですか」と尋ねたら、「そこにボート置いてあるから」とサラッと言うもんなあ。3~4艘あるうちのひとつはモーターボート。どこまで念入りな回収対策なんだと驚くが、狩猟期間以外にも使えるし、地元だから皆、宮澤さんのボートだと知っていて、置きっぱなしでも問題ないのである。

 とはいえ、たまには消えてしまうこともある。下見のときだったか、ボートのある場所へ行ったら見つからなかった。が、宮澤さんは慌てず、「あらら、誰かに持ってかれちゃったか。また調達しよう」と苦笑いして、それで終わり。おおらかなのだ。

 猟犬のいない我々は、クルマでゆっくり走りながら獲物を探す"流し猟"専門。山の奥までヤマドリを探しに行く猟も経験したいが、いまのところはもっぱら移動手段をクルマに頼っている。

 流しでのヤマドリ猟は"出会い系"の猟だ。走るのは山道。枯葉のなかにうずくまっていると周囲に溶け込んで判別不能なのだが、慣れてくると、わずかな動きにも違和感を感じられるようになってくる。日当たりの悪い藪など、ヤマドリの好む場所があると、そこを重点的にチェック。ときにはクルマを下りて藪に入って行く。運がいいと路上に群れでいることもあるので油断ならない。

 先日は、宮澤さんが流していると狩猟禁止の二ホンカモシカが道にいた。そう珍しいことではないので、よけてくれるのを待っていたそうだ。と、カモシカが入って行った藪の中から、ヤマドリの群れが動き出したという。

「予期してなかったから対応が遅れちゃったんだけど、ヤマドリは間をおいて飛ぶからチャンスあるかと弾を込めていたらオスが飛んだ。その後、オスが2羽か3羽飛んだかな。落ち着いて狙ってたら複数獲れたと思うけど、1羽だけしか獲れなかった。カモシカのおかげだね。ちょっと気づかない場所だった」