第12回 鴨キャッチャーを自作した

 長野市篠ノ井付近には、安定して鴨が入るスポットがいくつもある。

 そのひとつである明治橋のたもとを覗〔のぞ〕くと、ヒドリガモの群れがいた。マガモやカルガモ、コガモなどとともに、よく見かける鴨である。メスが茶褐色だが、オスは頭頂から額にかけてクリーム色のラインが入っているので見分けやすい。まだ食べたことはないが...。

 覗きにくい場所に固まっていて、近づけば逃げられそう。空気銃では狙えないので、飛ばすこと前提で、散弾銃の出番となった。

◇   ◇

 銃を構えた宮澤さんが、腰を落として川に近づいていく。動きが慎重なのは、狙いやすい方向に飛ばせたいためだ。距離的には問題ないが、撃ち落とした鴨を、できれば土の上、そうでなくても流れの緩い岸寄りに着地させたい。

 銃声が轟〔とどろ〕いた後、クルマの陰から飛び出すと、的中したオスのヒドリガモが水面を流れ始めたところだった。岸から少し離れているのでタモ網での回収は無理だろう。

「微妙なところに行っちゃったね。緩い流れに乗ればこっちに寄ってくる計算だけど」

 しかし、鴨はむしろ川の中央寄りに流れている。今日はカヌーを積んでいないし、積んでいたとしても流れのはやい場所では回収が困難。うーん、困った。

 あきらめ気分になりかけ、双眼鏡でまた覗くと、鴨は向こう岸に向かっている。岸からは15メートル程度か。

 待てよ。こんなときこそ鴨キャッチャーの出番じゃないか?

 鴨キャッチャーとは、釣竿の先に装着し、鳥を引っかけるよう工夫された狩猟グッズである。商品化もされているが、買うと3000~4000円とバカにならない。買って済ませるばかりじゃおもしろくないので、釣具屋で適当な針や浮きを調達し、ネットの情報を参考にして自己流で作ってみたのだ。

 構造はシンプルで、カワハギを引き寄せるハゲ掛け針に浮きをつけるだけ。なるべく引っかかりやすいよう、針の開きをより大きくするのがポイントだ。リール付きの安いセットを含めても、ざっと2500円で製作できた。目的はあくまで回収なのだから、糸の縛り方など適当でいい。鴨キャッチャーの重さを考えると強度に優れた竿がベターだろうが、普段は釣りをしないので最安値のものにした。

 ぼくも宮澤さんも鴨キャッチャー製作は初めてで、浮きのサイズなどは適当だ。しかも、作ったばかり。ぼくは当たらないし、宮澤さんにはカヌーがあるので、まだ試したことがない。いまがそのチャンスっすよ師匠!

「じゃ、トライしてみようか」