第13回 川の猟は段取りが命

 12月後半、池に氷が張るようになると、鳥撃ちの主戦場は川になる。それに伴い、池で芽生えた自信のようなものはシュルシュルとしぼみ、空気銃を使って川で猟をするのは、射撃の上でも回収においても、池より数段難しいとわかってきた。昨年は川でしか猟をしなかったためにわからなかったことが、今年になって理解できるようになってきた。

 池は猟師に有利な場所だ。波がないか、あっても小さい。撃つ場所をこちらの都合で決めやすい。動かれても、飛ばれないかぎりは待っていればチャンスがまた来る。池のサイズが手頃ならタモ網や鴨キャッチャーでの回収が安易。即座に回収しなくても流されてしまうことがない。

 川には波や流れがあり、獲物がじっとしているように見えても常に微動している。基本的に岸から狙うしかなく、鳥に見つからない位置取りができる場所は限定される。警戒されて泳ぎ出されたとき、岸から遠ざかれば川の流れに乗りやすくなり、距離がOKでも回収困難でチャンスは遠のく。鳥は不思議と岸沿いには動いてくれず、川の中央や向こう岸へ移動するので、粘り強く待っていても短時間内に戻ってくる確率は少ない。

 さらに、撃つ前に必ず回収作戦を立てる必要があり、目途がつかなければ指をくわえてみているだけだ。前回、鴨キャッチャーのテスト時みたいに、回収が失敗に終わることもある。池と比べて狙いにくく、当てにくく、回収しづらいのが川の猟なのだ。

 経験値が上がったら弾丸の消費量が増え、たくさん撃てば的中数も増えるというのは甘い皮算用。今シーズン、すでに初年度並みに弾を使ったのは、出猟回数が多いだけのこと。

結局、チャンスは一日に数回しかないのだった。

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 それでも手ごたえを感じているのは、射撃の腕が上がったためじゃない。撃つまでの段取りが進歩していると思うからだ。去年はすべてを宮澤さんに頼り、自分は撃つだけの人だったのだが、今年は宮澤さんがなぜその鳥を狙おうとするのか、理解できるようになってきたのだ。距離が適正、無警戒、回収可能。この3点セットを必須条件とし、ポジション取りがうまくいき、鳥が静止するタイミングが訪れたときだけ発射する。撃てば当分その場所には寄り付かなくなるので、直前で気づかれたら無理せず銃を下ろすのが正解。

 鳥撃ち猟師なら誰でもしていることを、イメージトレーニングできるようになると、段取りがスピードアップ。ここからこのように撃つという、自分なりの理由ができてくる。まぁ、進歩と言っても自分限定の前年比であって、亀のごとき歩み。ベテランなら、鳥を発見してクルマを停め、銃を担いで出ていくときイメージが出来上がっている。ぼくがそれを終えるのは、もう一度、獲物の位置を確認してからせいぜい1分後。まだまだ初心者の域を出ない。

 射撃の精度が問われるのは、やっとここからなのである。ぼくはまだ、撃つ前に気配を悟られてしまうケースが多く、ただでさえ少ないチャンスはますます減ってしまう。慎重に接近し、銃を構えた途端にスーッと川の中央に出ていかれると、鳥に遊ばれている気がするものだ。そんなとき、やけになって発射したって絶対に外す。直径4.5とか5.5ミリの弾丸で鳥の頭や首を狙う空気銃にまぐれ当たりはない。

 ボヤきたいんじゃなくて、ぼくが言いたいのはプロセスの楽しさだ。去年、的を外したときには射撃がヘタだからだと思った。いまは、段取りが悪くて外したと考える。鳥と勝負できる態勢が整っていれば、当たる確率はそれなりにあると。