第13回 川の猟は段取りが命
2015年1月
23日
撃ち下ろしでコガモを狙う
帰り道、気になる猟場でクルマを降りたらコガモの群れが目に入った。去年、鴨を半矢にしたところで、地形は頭に入っている。コガモが寛〔くつろ〕いでいるのは岸と岩に守られた流れのない場所。流されたとしても、回収に適した中洲状のところで待てばいい。ひとりでもなんとかなる。
銃を肩にかけ、タモ網を手にした。三脚と鴨キャッチャーも持っていく。この場所は寄っていける河原がない代わりに、上から見下ろすことができ、身を隠しやすいのが利点だ。
腰を低くして距離25メートル地点で停止。これ以上近づくと感づかれかねないのと、近すぎたらスコープ調整が難しいからだ。ベストは30メートル以上だが、その距離からでは木が邪魔になる。ここしかない。
コガモは10羽ほどいた。無警戒なので、ゆっくり三脚を立て、岸に近い数羽に狙いを絞る。注意ポイントはふたつ。距離が近いことと撃ち下ろしになることだ。
スコープの真ん中は、30~50メートルで合わせており、近ければ空気抵抗が少ない分、弾が上に行く。撃ち下ろしも同じく、弾が上に行く。それが1センチなのか3センチなのかは、未経験でわからない。そこで、スコープのど真ん中をコガモの頭に持ってくると、頭上を通過する可能性ありと考えた。狙いは首の上部にしよう。
左右のことも考えなければならない。ぼくの銃は短距離だと左にずれるのだ。首の上部、やや右側を狙うべきだ。
コガモはゆらゆら揺れながら狭い範囲で動いている。静止のタイミングをじっと待ち、オスの1羽が横向きで止まった瞬間に発射。う、外した。一斉にコガモが飛び立つ。
そのまま待った。コガモにはのんびりしたヤツがいて、空気銃の音ならば、1羽くらいは逃げずに留まるのがいるのだ。
しばらくすると、呑気なオスが残っているのがわかった。しかも、じっとして動かない。首、首と呟きながら引き金を引くと、バシュッという音がし、もんどりうつようにコガモが水中に潜り込んだ。的中だ。着弾の水しぶきも見えなかったから間違いない。
潜った場所から目を離さず、木立を駆け下りて岸へ。タモ網を構え、浮いてくるのを待つ。鴨キャッチャーもケースから出し、いつでも投げられる構えだ。
が、待てど暮らせど浮いてこないのである。
潜ったということは即死ではなかったと考えられる。弾は急所を逸れ、必死のコガモは水中に逃れようとした。飛ぶ力は残っていなかったのだと思う。懸命に泳ぎ、水中の流れに乗って下流に運ばれたかもしれない。あきらめきれずに川を見渡せる位置まで上って双眼鏡で探したが、とうとう発見できなかった。
◇ ◇
帰宅後、悔しさのあまり宮澤さんにメールすると、冷静なコメントが戻ってきた。
「よくあることですよ。潜った後そのまま出てこなかったり、とんでもなく遠いところで浮くこともあります(>_<)」
段取りは良かったが、射撃精度が悪かったのだ。今年も半矢、やってしまったなあ。