第12回 鴨キャッチャーを自作した

鴨キャッチャーの威力は如何に?

 ヒドリガモは明治橋をくぐり、静かに流れている。クルマで対岸まで行き、岸に接近できる場所で待ち構えることにした。昨日降った雪が残っていて、うっかりするとひざまで埋もれるため、なかなか適当な場所が見当たらない。その間にも、鴨は微妙にコースを変えながらこちらへ迫ってくる。

「岸のほうへは来ないね。岸からは15メートルくらいかな。トロさん、投げてみて」

 使うのは竿がしっかりした宮澤さんの鴨キャッチャー。まず一度練習を。木立にかからないよう、サイドからスッと...。手加減しすぎて距離が出ないよ。浮きが小さいのか、ハゲ掛け針も水面に潜ってしまった。それでも見えてはいるので、上に引っ張り加減で獲物に触れさせれば、羽に針が食い込んでくれるだろう。

 2度目。力を入れて竿を振る。コントロールはまずまずで、流れてきた獲物をがっちり捕らえる...ことはできなかった。距離が足りないのである。ヒドリガモは針の先3メートルを通り過ぎると、より流れの速い本流側に流れ去って行った。さらにクルマで追いかけ、つぎの橋で待ち構えたが、粘りも虚しく、広い川の中央にまで出てしまった。

 みすみす獲物を逃がすなんて...。悔しさがこみあげてきた。鳥撃ちは、獲物の回収まで無事に終えてナンボなのだ。

「惜しかったね。でも、なんであれだけしか飛ばなかったんだろう。あ、わかった!」

 竿をチェックしていた宮澤さんが笑い出した。鴨キャッチャーはていねいに作ったが、竿の点検を怠ったため起きたミスだったという。

「ははは、これじゃ飛ぶわけないよね」

 リールには、10メートル分しか糸が残されていなかったのである。

◇   ◇

 気がついたのは道具作りの楽しさだ。あれこれ考え、うまくいくイメージを頭に浮かべて自分なりの形にしていくのは文句なく面白い。調子に乗ったぼくは、射撃の際の固定台も作りたくなってしまった。

 鳥に発見されずに位置取りしようとすれば、どうしても姿勢は低くなりがち。腹這〔ば〕いになって撃たざるを得ないこともままあり、固定用に使っている三脚が役に立たない。そのため、腕のないぼく安定した姿勢が取れず、狙いを定めるのに手こずった挙句、的を外してしまうのが常。そんなとき、軽量で自在性のある固定台があれば便利だと思ったのだ。

 材料は生地屋で調達。10×20×10センチのクッション素材とビニール製のテーブルクロス生地を買い、ツマに頼んで縫ってもらった(自分で縫えないのが情けない)。これならデイパックに入る大きさで耐水性があり、汚れても平気。銃を置いてみたら、すんなりと安定した。

 難しいものは作れないが、ちょっとした工夫は自分でできる。当たり前じゃないかと思われそうだが、ぼくにとっては発見だ。狩猟は法律厳守で行わなければならない。銃の改造などもってのほかだ。その代わり、守るべきことを守れば、道具の製作は自由度が高い。

 余裕があったら一流品で身を固めるのもいいだろうが、小遣いの範囲でやりくりしなくちゃならない素人猟師には自作が向いている。ちょっと考えただけでも、カメラ用で代用している三脚や、いただきもので済ませているナイフ、いまひとつサイズが合わない銃の収納袋など、手を加えたいものがいくつも出てきた。

今回のイラスト