第11回 ヤマドリとキジを探して

"出会い系"猟師は運まかせ?

 キジは穀物を好むため里山に多くいる。昔は本当に多くて、農家の人に「キジ撃ってくれ」と頼まれることもあったらしい。里山の人口が減り、耕作地が少なくなったいまではそんなこともなくなったけれど、猟師がウロウロしていても誰も怪しまない地域性は健在だ。キジはそれほど警戒心が強くないが、ススキの藪に逃げ込んでしまうと犬のいない我々には不利。遠くから発見し、うまく距離を詰め、散弾銃で狙える範囲に飛ばせることができるかどうかが勝負となる。そのためにはひたすら見ること...地味だね。

 でも、そこがいい。ヤマドリやキジを探すとき、何の変哲もない山道や農道は、獲物の潜む特別な場所へと変わる。切り株の陰、こんもりした土のでっぱり、枯葉の向こう、畑の隅、ススキの切れ目...。ただ走っているだけの行為が、いつ、どこで出会いがあるかわからず、緊張感の途切れない、スリリングな軽トラドライブに変貌するのだ。

 出会いの瞬間は、今日はいないかとあきらめかけた頃、絶妙なタイミングで訪れることが多い。先日、コーイチさんとキジを探しているときがそうだった。有名なキジ場で、いることはわかっているが、"出会い系"猟師としては運に頼るしかない。30分くらいは流しただろうか。午後だったので、別の猟師が朝からきて、キジは逃げてしまったかなと話しているとき、50メートル先に群生したススキに違和感を感じた。目が、何かいるぞと訴えてくる。

「コーイチさん、何かいる」

 薄茶色のススキは風にそよそよ吹かれていたが、その動きなら散々見てきた。そうではない何かが視線の端っこに引っかかったのだ。

 色だった。ススキの隙間にほんの小さく、青が見えたのだ。

「オスのキジだ!」

 そっとクルマをバックさせて停車し、ぼくが追い出し役を務めることにした。キジはススキのなかに隠れてじっとしているようだ。いちおう銃を構えてみたものの、姿が見えなければ空気銃では狙いづらい。であれば、ぼくの仕事はキジを打ちやすい畑側に飛ばすことだ。ススキから目を離さず、畑と逆側に歩くと、危機感マックスとなったキジが飛び出す。

 コーイチさんの2発目がキジを捉え、畑に落ちてきた。このキジ、ススキ林の奥にいたなら発見できなかったに違いない。そう思うと不思議な気持ちになる。

◇   ◇

 猟をする以上は仕留めたいのが当然だし、そのために猟師はシーズン前からヤマドリやキジの居場所に見当をつけている。そういう努力をしつつも、実際の猟には運まかせの要素が強くて、ぼくにはそれがおもしろい。

 今日がダメなら明日がある。明日がダメでも来週がある。狩猟期間全体を通して、時間を見つけては猟場へ足を運び、出会いに胸をときめかせる。効率第一の人にとっては無駄に思えるかもしれないが、こんな贅沢〔ぜいたく〕な話はないと思う。

今回のイラスト